スペイン語一列(竹村)補助教材 全訳

「それらの女たち」

 一瞬あなたたちを魅惑し、そのあと消えてしまう女に、あなたたちは人生で一度も逢ってきていないのか?そういった女は、夏の静かな夜に素早く過ぎ去る星のようなものだ。あなたたちは一度、保養地(温泉)で、駅で、店で、路面電車で、(そういった女に)逢うことになるだろう。そういった女の眼差しは、神の啓示のようであり、あなたたちの魂の奥底から湧き出る突然の力強い開花のようなものである。もしかすると、その女は美しいのではなく、我々の心により深い跡を遺し、最初の瞬間から(我々の)目を眩ますのではないのかもしれない・・・
 あなたたちは列車の車両に乗り込むか、保養地にある海の近くに座るかする。そのあと、あなたたちの近くにいる人たちに注目している。ここに、金髪で黒い服を着た女がいる。あなたたちが座った時目に留まらなかった女だ。彼女を注視しなさい。(その間に)何分かが過ぎ去ってゆく。波がゆっくりと行き来する。列車が野を横切る。彼女を注視しなさい。彼女の髪、胸、口、丸みを帯びて繊細な顎に目を置きなさい。そしてどのように彼女の秘められた完璧さを発見しているか、あなたたちの人生の中に現れてきている、この未知の人へのあなたたちの強力かつ不滅の好意の芽生え方を見てみなさい。
 そして彼女は少しの間しかいないだろう。彼女は立ち去ってしまう女であり、優しさの、細い一筋の明かりのようにあなたたちの心に留まり続けるだろう。彼女が遠ざかってゆくのを見る時、あなたたちはいつまでも名付け難い苦しみを味わうことだろう。なぜ?この女とあなたたちの間にどんな親近感が存在したのか?あなたたちは自分たちの悲しみをどのように理由付けるだろうか?我々は知らないが、未知の世界の縁を辿るように、ぼんやりと予感する。彼女は我々が何も説明することが出来ない女であり、立ち去る際に何か―我々が属し、決して再び見つけることが出来ないもの―を持ち去ってしまう女である。
 私はこの名付け難い悲しみを幾度となく感じてきた。私は子供の頃、夏にしばしば州都に行き、海の近くの保養地で座っていた。そしてその時、私の視界の前に広がった青い海のように神秘的で暗示するようなこれらの女にいくらか逢って、その後も逢ってきた。その女は私に永遠を思わせた。